「せっかく採用できた人材が、1年も経たずに辞めてしまう…」
ある八王子市の製造業社長が、そう漏らしました。
補助金を活用して「人材採用」や「職場環境改善」に取り組んだものの、結果的に人が定着せず、かえって職場の不満が高まってしまったという声も少なくありません。
実はこの背景には、“制度の誤用”があります。
単に制度を使えば成果が出るわけではなく、「制度と経営課題の整合性」が欠けていると、むしろ逆効果になりかねません。
「人が辞める」会社に共通する課題とは
補助金を活用しても「人が辞める」会社には、次のような共通点があります:
- 制度導入後の運用体制を整備していない
- “人材目線”での改善策ではなく、“経営者の都合”で制度を選んでいる
- 採用と定着の施策を切り離して考えている
たとえば、「テレワーク機器を整備して離職を防ぎたい」として人材確保等支援助成金を活用しても、現場の運用マニュアルや教育設計が無いままでは形骸化してしまいます。
“人が辞めない”ための補助金制度とその選び方
人材の採用・定着に活用できる代表的な制度を、目的別に整理しました。単に「使える制度」ではなく、自社の課題に合った支援策を選ぶことが、定着率や採用力の向上に直結します。
目的 | 制度名 | 主な補助内容・上限 |
---|---|---|
定着率を上げたい | 業務改善助成金 | 設備導入と賃上げにより最大600万円(助成率3/4~4/5) 厚生労働省公式リーフレット(2025年版) |
教育機会を増やしたい | DXリスキリング助成金(東京都) | 1人あたり最大75,000円、企業全体で最大100万円(経費の3/4) 東京都・東京商工会議所制度案内 |
採用競争力を上げたい | キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 有期→正規:最大80万円(重点支援対象者)、それ以外は40万円 無期→正規:最大40万円または20万円 厚生労働省2025年4月版資料 |
補助金を活かす鍵は、“どんな組織をつくりたいか”を明確にすること。
制度に振り回されるのではなく、組織のあり方から制度を選ぶ。この視点が、人が辞めない会社づくりの第一歩になります。
事例】補助金誤用からの逆転:定着率90%の成果に羽村市の精密部品製造業S社では、かつて「補助金で設備は導入したけど人が辞める」という課題を抱えていました。そこで、以下の順で支援を実施:
- 業務改善助成金を活用し、作業工程を改善
- 同時にキャリアアップ助成金で非正規→正社員化
- 社員アンケートで「なぜ辞めるのか」を可視化
結果、1年後の離職率は15%→8%に低下。人事コストの削減だけでなく、紹介入社も増加しました。
専門家視点:定着率=エンゲージメント設計の結果補助金の本質は“制度活用”ではなく、“経営戦略”です。
人材が辞めない仕組みは「給与+やりがい+心理的安全性」で構成されます。補助金制度はそのきっかけにはなりますが、制度に合わせて経営方針を歪めるのは逆効果です。
まず、会社として「どんな働き方・環境を目指すか」を定めること。その上で制度を“選ぶ”視点が不可欠です。
まとめ:「補助金=採用ツール」ではなく「組織づくりの手段」に補助金を誤用すると、逆に「人が辞める」原因になります。
しかし、戦略的に活用すれば、採用力と定着力を一気に高める武器となります。
“働きたくなる会社”を、制度の力で後押ししませんか?