2025年11月29日
政府は2025年度補正予算案を閣議決定し、一般会計総額18兆3034億円の大規模な経済対策を打ち出しました。この中で、経済産業省関連の中堅・中小企業向け対策は、既存基金の活用を含めて1兆1300億円という過去最大規模に達しています。本稿では、中小企業経営者の皆様に特に関係の深い支援策について詳しく解説いたします。
予算案の全体像
2025年度補正予算案では、経済産業省の中小企業・小規模事業者等関連予算は総額8364億円、既存基金を含めると1兆円を超える規模となります。前年度から4兆円以上増加した今回の補正予算は、「100億企業」の創出と賃上げのための生産性向上という2つの大きな柱を軸に構成されています。
1. 成長投資と生産性向上への大規模支援
中小企業成長加速化補助金の拡充【3400億円の内数】
将来の売上高100億円を目指す中小企業の大胆な投資を支援する「中小企業成長加速化補助金」が拡充されます。政府は地域の雇用を支える100億企業の創出を強力に推進しており、この補助金が中核的な役割を果たします。
賃上げに向けた大規模成長投資の促進【4121億円】
地域の雇用を支える中堅・中小企業やスタートアップ企業が、人手不足等の課題に対応し成長するための大規模投資を促進します。
主な特徴:
- 総額4121億円(新規基金2000億円+既存分2121億円)
- 「100億宣言企業」向けに1000億円程度を重点配分
- 大企業からの経営人材受入れ(転籍、兼業、副業、出向)に対する給付金制度を新設
この人材受入れ支援は、地方の中小企業が高度な経営ノウハウを持つ人材を確保し、経営体制を強化することを目的としています。
デジタル化・AI導入を含む生産性向上支援【3400億円の内数】
物価高や米国関税による貿易環境の変化に対応するため、「稼ぐ力」を強化する生産性向上・省力化投資を支援します。
対象となる補助金:
- デジタル化・AI導入補助金
- 持続化補助金
- 事業承継・M&A補助金
デジタル化、販路開拓、事業承継・M&Aに関する設備投資等を後押しするとともに、重点的なハンズオン支援をはじめとした総合的なソフト支援も実施されます。
革新的製品開発支援【既存基金活用で1200億円規模】
中小企業等が革新的な製品やサービスを開発し、海外を含む新しい市場へ進出する際に必要な設備投資等を、既存基金を活用して支援します。
省力化投資の集中推進【既存基金活用で1800億円規模】
深刻化する人手不足に対応するため、省力化投資を集中的に支援します。業種別の「省力化投資促進プラン」を踏まえ、従業員規模ごとの補助上限額が見直され、中小企業が業態に合わせた効率的な投資を実施できるよう配慮されています。
海外ビジネス展開支援【112億円】
米国関税の影響を受ける中堅・中小企業の販路多角化に向けて、日本貿易振興機構(ジェトロ)が支援を強化します。
具体的な支援内容:
- 商社OBなどの専門家による伴走支援
- 越境EC活用支援
- 見本市出展支援
- 海外拠点の新設・増員
- 地方への海外展開専門家の配置
2. 伴走支援体制の強化と取引適正化
プッシュ型伴走支援体制の強化【376億円の内数】
中小企業が最低賃金引き上げ、省力化投資、物価高騰、インボイス対応などの事業環境変化に適切に対応できるよう、専門家による相談や各種支援施策の活用を促進します。
商工会・商工会議所、認定支援機関、よろず支援拠点、活性化協議会、承継センターなどの支援機関の体制を強化し、特に「プッシュ型の伴走支援モデル」を構築します。地方自治体が最低賃金引き上げに伴う小規模事業者への伴走支援等を講じる場合、国がその費用を支援します。
中小企業活性化・事業承継総合支援【74億円】
財務上の問題を抱える中小企業等に対し、収益力改善、事業再生、再チャレンジを支援します。また、後継者不在の中小企業等に対する事業承継・引継ぎ支援も実施します。
経営改善計画策定支援【101億円】
認定経営革新等支援機関である民間専門家が行う経営改善計画の策定支援や伴走支援に関する費用の一部を国が負担します。
中小企業取引対策【7.6億円】
中小企業が物価高騰分を適切に価格転嫁できるよう、取引適正化を最重要課題として位置付けています。
主な施策:
- 2026年1月施行の「中小受託取引適正化法」および「受託中小企業振興法」の周知徹底と厳正執行
- 下請Gメンによる取引実態調査
- 価格交渉促進月間のフォローアップ調査
- 発注者への指導徹底
- 受注側の価格交渉力向上支援
- 国・自治体の請負契約単価の見直し
3. 資金繰り支援と金融基盤の強化
信用保証制度の拡充【152億円】
経営改善や事業再生に取り組む中小企業の借入に対して、信用保証協会が保証を行い、国が保証料の一部を補助します。民間金融機関やモニタリング能力を有する者との連携強化も促進されます。
日本政策金融公庫等による資金繰り支援【40億円】
米国関税措置の影響を受けた事業者等に対して、日本政策金融公庫等が資金繰り支援を実施します。
4. 災害復興支援とエネルギー対策
なりわい再建支援【268億円】
令和6年能登半島地震、令和3年・4年福島県沖地震、令和2年7月豪雨により被害を受けた中小企業等の施設・設備の復旧・復興を支援します。特に能登半島地震等で被害を受けた伝統的工芸品事業者に対する産地活性化支援も含まれます【1.1億円】。
局地激甚災害への支援拡充【53億円の内数】
局地激甚災害として指定された地域の中小企業等に対し、復旧支援を拡充します。地方自治体が災害復旧支援を講じる場合の自治体連携補助金の補助上限が引き上げられます。
エネルギー・物価高への対応
- 電気・ガス料金負担軽減支援【5296億円】
- 燃料油価格激変緩和対策事業の継続実施
- SSネットワーク維持・強化支援【160億円】
- SS過疎地重点支援を含む設備投資支援
- 環境・安全等対策基金事業【30億円】:中小SSの運転資金借入利息支援
- 中小企業等エネルギー利用最適化推進事業【33億円】
- 省エネ専門家によるエネルギー使用状況分析
- 運用改善・設備投資提案支援
アップシフト合同会社からのアドバイス
今回の補正予算案は、中小企業の成長段階に応じた多層的な支援体制を構築しています。特に注目すべきは以下の3点です:
- 100億企業を目指す成長志向企業への重点支援:大規模投資と経営人材確保を同時に支援する包括的なアプローチ
- デジタル化・AI導入による生産性向上:人手不足や物価高に対応するための実践的な支援策
- 取引適正化の徹底:価格転嫁を可能にする制度整備と実効性のある監視体制
これらの支援策を最大限活用するためには、自社の成長ステージと課題を正確に把握し、適切な補助金・支援制度を選択することが重要です。また、2026年1月施行の新法も視野に入れた取引条件の見直しも検討すべき時期に来ています。
アップシフト合同会社では、これらの補助金申請支援や経営改善計画の策定、デジタル化推進など、中小企業の成長を総合的にサポートしております。ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
出典: 朝日新聞デジタル「政府の2025年度補正予算案、中小企業へ100億企業やAI導入を支援」
経済産業省公式サイト:https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2025/hosei/index.html
