経営が追いつかない? 補助金が“賃上げ前提”になる時代に備える
「補助金はありがたい。でも“人件費を上げてください”って、現場の人手不足と両立できるのか?」
そんな声を、いま八王子の製造業経営者から多く耳にします。
補助金が「賃上げ前提」になる時代。もはや“もらうだけ”では立ち行かないのが現実です。
本記事では、制度の変化と、それにどう備えるべきか。
そして、現場が疲弊しない「中長期的な賃上げ+補助金活用」の考え方を解説します。
現場はギリギリ…でも「賃上げしないと補助金が通らない」時代へ
2024年度以降、主要な補助金の多くが「賃金引上げ」を採択要件・加点要件に組み込んでいます。
- ものづくり補助金:給与支給総額を年平均+2%以上
- 省力化投資補助金:賃上げ実施で補助上限1.5倍
- 賃上げ促進税制:賃上げ+リスキリングで最大45%税額控除
つまり、「お金を使う前提」で補助金を活用しないと、今後は採択すら難しい状況になりつつあります。
東京都の支援制度と「リスキリング助成金」
たとえば、東京都のDXリスキリング助成金では、従業員の再教育に最大100万円が補助されます。
https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/skillup/boshu/skill-R7dx-risk.html#cmsa
また「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業」では、下請脱却や高付加価値化に最大2,000万円が支給されます。
https://www.tokyochuokai.or.jp/sienseido/jyoseijigyou/asuchare.html
人件費に直結する制度ばかりが注目されがちですが、賃上げを支える“土台”となる投資こそが、今の支援制度の本質です。
【実例】賃上げと補助金活用を両立した製造業の取り組み
- 松本興産(埼玉県)
DXと自動化で4,000万円の経費削減 → 22年度は平均7%、23年度は2.2%の賃上げ【※出典:社長online】 - 中山鉄工所(佐賀県)
「市役所に負けない年収」を目標に継続的な賃上げ+賞与制度でモチベーションを向上 - 花巻温泉(岩手県)
観光庁の補助金を活用して高単価客室を整備し、収益改善と従業員待遇改善を両立
補助金は“人に還元する”ための戦略ツール
「高すぎる年収は持続性を失う」「内部留保は給与の3~5年分を確保する」──これは坂本光司氏が提唱する“人的資本経営”の基本です。
単なる賃上げではなく、「事業の成長=人への投資」と捉える経営が、補助金制度とも最も親和性が高いのです。
まとめ:目先の賃上げではなく、“設計された賃上げ”へ
「補助金は“もらう制度”ではなく、事業を動かす“戦略ツール”だ。」
そう捉えるなら、補助金と賃上げは対立構造ではありません。
経営課題と現場課題をつなぐ「橋渡し」として、今こそ制度活用が求められています。
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